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院長コラム アレルギー学会が言っている(積極的に負荷免疫療法をする)ことは本当か?
最近のアレルギー学会では、「生まれてすぐから保湿剤を塗り皮膚を綺麗に保ち、皮膚からの食物感作を減らし、早期から卵などを食べさせることがアレルギーの発症を減らす」という意見が王道となっています。「卵アレルギーになりやすい子どもは、皮膚から卵成分が侵入し感作され、食べていなくてもアレルギーを起こしやすくなる」という考えです。これは、「茶のしずく」事件がきっかけとなっているのですが、茶のしずく石鹸の中に小麦が入っていたため、ずっと使っていた人の中から、小麦アレルギーが発症して大きな問題となりました。これを、子どもの肌に置き換えて考えられたもので、空気中に卵の抗原はどの家庭にも存在するというデータがあり、これが弱い皮膚を持つこどもの皮膚から侵入し、卵アレルギーになるのではないかという考えがアレルギー学会で持ち上げられるようになりました。
この時、アレルギー学会の会員の中でも、たとえ空気中に卵の成分があったとしても、皮膚から侵入するのは考え難いという意見もありました。茶のしずく石鹸のように刷り込むわけでなく、油性でもないものが肌から侵入してアレルギーを引き起こすとは考え難いのではないかというものでした。(茶のしずくの被害に遭われた人は、その後、小麦を食べられるようになったという事実もあまり知られていません。)
しかし、皮膚からの侵入派が多数を占めたので、アレルギー学会としての考え方は今のような状態になってしまいました。
また、早めに、食物負荷を勧めるという考えも、アメリカでは賛同されていませんが、日本では早期にしたほうが早く治るという考えが主流になっています。例えば、卵アレルギーがあった場合、まだ、血液検査での点数が正常になっていなくても、早い段階から少しずつやっていったほうが早く良くなるというものです。しかしアメリカの報告では、3歳までに、1)制限していて食べられるようになる確率と2)少しずつやって食べられるようになる確率は差がなかったというデータが出ました。3歳くらいになると消化吸収の機能が発達してきて、アレルギーがあった子どもも自然と治ってゆくという結果でした。
しかし、現在のアレルギー学会では、「制限して待つは、もう古い考えで非常識」とまで言っています。早くやったほうが良いという考えが絶対正しいとは、まだ決めつけるのは早いのではないかと個人的に思います。しかし、こういう考え方だと、ちょっとアレルギーをかじったお母様方には、「それは古い、早めに負荷してゆくところがいい病院なのよ」と言われそうですが。
令和3年8月31日 院長