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母乳育児の素晴らしさ

母乳は新生児、乳児の感染防御に大きく貢献しているということはご承知でしょう。その他、肥満や糖尿病などの生活習慣病などの頻度も減少させ、精神運動発達促進の面でも重要な役割を果たしていることがわかってきました。

感染防御の面から

母乳には、免疫グロブリン(主にIgA)、やラクトフェリン、リゾチーム、オリゴ糖といった免疫防御因子が豊富に含まれており、免疫系が未熟な新生児、乳児を感染から保護しています。免疫グロブリンは細菌やウイルス、真菌を防御、ラクトフェリンは細菌、ウイルスの防御、腸内のビフィズス菌の増加、免疫調節に関与、リゾチームは殺菌作用、オリゴ糖は腸内ビフィズス菌を増やし腸内感染症を防御する働きを持ちます。
アメリカの研究で、母乳哺乳により乳児死亡が21%減少するという報告があります。下痢を症状とする腸炎の発症に関しては、母乳栄養児(混合も含む)は人工栄養児に比べて、その発症を64%減少。気管支炎、肺炎などの下気道感染の入院のリスクに関して生後4ヶ月までの完全母乳児は人工栄養児にくらべ72%も減少。急性中耳炎の発症に関して3ヶ月以上の完全母乳児は人工栄養児にくらべ50%減少させるという報告があります。かぜ症状発生に関しての研究では、4ヶ月までは完全母乳でその後、混合栄養児は人工栄養児にくらべ35%減少、6ヶ月まで完全母乳児は人工栄養児にくらべ63%まで減少するという報告があります。
以上のように、母乳によって急性中耳炎、消化器感染症(下痢)、かぜ、気管支炎、肺炎などにおいて、母乳の感染防御効果が確認されています。

生活習慣病との関連

肥満、高血圧、高コレステロール血症、糖尿病に関して多くの研究から、母乳育児がこれらの生活習慣病予防に効果があるとの見解が示されています。しかし、この予防効果が母乳自体によるのか、母乳育児をする家庭の健康志向が強いためかどうかはさらなる研究が必要です。

精神運動発達との関連

とくに欧米において、母乳栄養、母乳育児が児の認知能力を向上させるという多くの報告が見られます。そしてそれは、未熟児においてよりその傾向が強いといわれています。
母乳の栄養学的な観点から、母乳に含まれるいくつかの栄養素が中枢神経に関与していることが報告されています。たとえば、DHA(ドコサヘキサエン酸)、などの脂肪酸、タウリン(アミノ酸)、インスリン様成長因子-1(IGF-1)などが、脳にとって重要であることがわかってきています。DHAは脳神経細胞にはかかせない成分で、妊娠後期に胎盤から胎児へ移行しその発達に重要な役割を果たします。特に早産となった場合は、母乳によりその補給が大切になります。
タウリン、IGF-1も母乳中に含まれる栄養素ですが、これらの摂取量が多いほど脳の発達をより促進させることが報告されています。

母乳育児と愛着形成

射乳ホルモンであるオキシトシンは「愛着ホルモン」ともいわれ、母体の脳を刺激し愛着行動を持続させる作用が報告されています。さらに、直接授乳によるオキシトシンの分泌が脳内報酬系を刺激し母性行動のスイッチをオンさせ母親として子どもへの愛着が増すといわれています。

以上のように母乳には新生児、乳児にとって大きなメリットがあるとともに、授乳行為が子どもへの愛着形成に大きな意味を持っているということが分かってきました。

平成23年2月2日 院長
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