溶連菌感染症後の尿検査について
溶連菌感染症後の尿検査
2017年7月の日本小児科学会雑誌に「溶連菌感染症後の尿検査は不要である」という衝撃的な記事がありました。先に私の意見を言わせて貰えば、こんな論文がよく受理されたなという感想(そうじゃないだろう)です。
溶連菌感染症になると、治療の有無にかかわらず、稀ですが「溶連菌感染症後の急性糸球体腎炎」を起こすことが知られています。腎臓から血液やタンパクが露出し、また、十分な老廃物の排泄ができなくなり、体に不要な成分がたまります、そのため眼瞼が腫れたり、高血圧を起こしたり、尿がコーラ色(血尿)になって顔色も悪くなります。しかし、軽症例もたくさんあることが知られています。また、中等症の中には病院へ行かずに治ってしまっているものもあることが考えられます。
この文献としては、「わざわざ検尿をしなくても、眼瞼の腫れやおしっこの異常に気づいたら、来院をすれば良いのではないか、軽症のものは放っておいてより」という趣旨のものです。
現在90%以上の施設が尿検査を行っています。それに対して真っ向に反対する意見です。
溶連菌感染症後の急性糸球体腎炎は軽症から、前述したような入院が必要なものまで様々あります。入院によってすぐ治るのかというとそうではなく、対症療法歯科ありません。高血圧があればそれをコントロールしたり、食事制限をしたりして経過を見て行くだけになります。2週間以内に症状は改善し、血尿だけがしばらく残ります。
ひどいものだけを見つけるのなら、尿検査は不要かもしれません。よっぽどひどくなければ自然治癒するわけですから、多少、目が腫れようが、おしっこの異常があろうが、元気なら受診する必要もなくなります。この論文を見ていると、そういうことも言えます。
この論文の中には、尿検査の時に3名ほど、眼瞼の腫れに気づかれていることが記載されています。ということは、ご両親は、身体の変化に気づかずに尿だけを持ってきたことになります。尿検査を持ってきていなければ気づかれなかったということになります。
私としては、この論文を読んで、溶連菌感染症後には尿検査は不要であるというには、まだまだ証拠不十分であると思いました。
軽微なものは、放っておいて良いという考えも賛成できません。
ですので、当医院では今後も、溶連菌感染症の後の尿検査は続けたいと思っております。検尿前に、目が腫れて、おしっこの色がおかしくないか(急性糸球体腎炎の急性期の症状)などに気をつける必要はあります。