手足口病について
手足口病について
「ポイント」
1) 夏場になると腸管で活発に活動するエンテロイウルス属によって起こる病気
2) 何種類もウイルスがあるので何度もかかる
3) 早く治る薬はない。対症療法となる
4) 発熱は30%ほどに見られる
5) 流行するウイルスの種類によって、まれに、髄膜炎、脳炎などの中枢神経系の合併、または1ヶ月後くらいに爪が変形する(治る)。などの症状の違いがある
6) 症状が消えても、感染源となりうるし、不顕性感染(手足口病なのに症状が出なく、人には感染させる)もあるので、感染の拡大を阻止するために、何日間は休みなどの規制は無駄
7) 集団生活は、口内炎や手足の発疹に関係なく、本人が食事もとれて元気であれば、人に感染させる可能性はあるが、上記の理由のため登園登校はさせて良い
「手足口病の詳細」
手足口病(hand, foot and mouth disease:HFMD)は、その名が示すとおり、口腔粘膜および手や足などに現れる水疱性の発疹を主症状とした急性ウイルス感染症です。本疾患はコクサッキーA16(CA16)、CA6、エンテロウイルス71(EV71)などのエンテロウイルスが原因ウイルスです。基本的に予後は良好な疾患ですが、急性髄膜炎の合併が時に見られ、稀ですが急性脳炎を生ずることもあり、なかでもEV71は中枢神経系合併症の発生率が他のウイルスより高いことが知られています。
4歳位までの幼児を中心に夏季に流行が見られる疾患であり、2歳以下が半数を占めます。また、学童以上の年齢層の大半は既にこれらのウイルスの感染(不顕性感染も含む)を受けている場合が多いので、成人での発症はあまり多くなく、男子に多い傾向が見られます。
感染症発生動向調査によると、国内における手足口病流行のピークは夏季ですが、秋から冬にかけても多少の発生が見られます。
ヒト-ヒト伝播は主として咽頭から排泄されるウイルスによる飛沫感染でおこりますが、便中に排泄されたウイルスによる経口感染、水疱内容物からの感染などがあります。便中へのウイルスの排泄は長期間にわたりみられます。
発熱は約1/3に見られるが軽度であり、38℃以下のことがほとんどです。通常は3~7日の経過で消退し、水疱が痂皮を形成することはありません(水ぼうそうとの違い)。
稀には幼児を中心とした髄膜炎、小脳失調症、AFP、脳炎などの中枢神経系合 併症を生ずることもあります。 特に、EV71による場合には、中枢神経系合併症に注意する必要があります。近年のアジア地域における重症例の多くは、EV71急性脳炎に伴う中枢神経合併症によるものと考えられています。
近年のコクサッキーA6による手足口病では、従来のHFMDと発疹の出現部位が異なり、水疱は扁平で臍窩を認め、これまでより大きいことや、手足口病発症後、数週間後に爪脱落が起こる症例(爪甲脱落症)が報告されています。
特異的な治療法はありません。抗生剤の投与は意味がなく、合併症を生じた場合の特異的な治療法は確立されていません。予防としては有症状中の接触予防策および飛まつ予防策が重要であり、特に手洗いの励行などは重要です。患者あるいは回復者に対しても、特に排便後の手洗いを徹底させることがたいせつです。
手足口病は、学校で予防すべき伝染病1~3種に含まれていません。主症状から回復した後もウイルスは長期にわたって排泄されることがあるので、急性期のみ登校登園停止を行って、学校・幼稚園・保育園などでの流行阻止をねらっても、効果は期待ができません。本疾患の大部分は軽症疾患であり、集団としての問題は少ないため、発疹だけの患児に長期の欠席を強いる必要はなく、また現実的でありません。通常の流行状況での登校登園の問題については、流行阻止の目的というよりも患者本人の症状(発熱がなく元気で)や状態(食事がとれる)によって判断すればよいと考えられます。
平成30年6月20日