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子どものおちんちんや肛門付近の病気

きのした小児科です。毎月出しているニュースレターの原稿がだんだんおそくなりましたので、今回大作として5、6月号とさせていただきます。今回の内容は外来で日常よく見かけるおちんちんや肛門付近の病気について紹介したいと思います。ここで紹介する病気は、新生児期や乳児期にみられるものが多く、気づかなかったり、気づいてもどこで相談してよいかわからないものが多いかと思われます。産婦人科や検診で指摘されることが多いのではないでしょうか。もちろん心配して来院される場合も多いです。今回、これらの病気に関して、放っといてよいものか、またはいつ頃どのような処置をするのかなどをご説明したいと思います。医療機関や先生方によっては方針が多少異なる場合もございますが、それはまだ、はっきりとした善し悪しのデータがそろっていないためであろうと思われます。ここでは、その辺も含めご説明したいと思います。

臍ヘルニア

生まれてすぐは目立ちませんが、2-3ヶ月頃になるとだんだん大きくなってきます。4ヶ月頃から小さくなり始め1歳で95%は自然治癒するといわれています。そのため何もしないで様子みるのが普通と考えられてきましたが、最近では、出口の穴(ヘルニア門)が広く、ヘルニアの出方が大きい場合は、早期に綿球をあてて絆創膏固定する積極治療が推奨されています。ヘルニアが大きい場合は出口の穴が閉じなかったり、治っても出ていたところの皮膚がたるんでデベソ状になり、見かけをよくする手術が必要になることがあるからです。絆創膏固定による治療は、小児外科医の指導のもとに行う必要があります。

鼠径(そけい)ヘルニア

小児の鼠径ヘルニアは、お母さんのおなかの中で、精巣がお腹から睾丸の袋に下がってくるときに、通路(腹膜鞘状突起)が出来上がります。これが開存したままであると腸や卵巣がその通路を通って鼠径ヘルニアとなります。1歳以下では自然治癒の可能性があるといわれていますので、1歳まで待って治らなければ手術をするところもありますが、ヘルニア陥屯(ヘルニアが出っぱなしになって引っ込まずに出ている腸がダメージを受けるため開腹手術をする)の可能性(15%)があるため、見つかり次第手術をする医療機関もあります。

停留精巣(睾丸)

精巣は生まれてくる前に大半は胎児のお腹から陰嚢の袋まで降りてくるのですが、お腹の中でとどまったり、完全に袋の中に収まりきれない場合があります。これを停留精巣といいます。生後1年以内に自然におりてくる可能性(未熟児に多い)がありますので、1歳ころまでは様子を見ることが多いですが、精巣の発育や癌化の可能性からかんがえると、1歳過ぎには手術をすることが望ましいようです。
*)移動性精巣:一見、片方だけ精巣が袋の中に入っていないように見えてもお風呂の中でリラックスした状態や寝ているときなどは、ちゃんと袋の中に収まっているような精巣をいいます。これは手術の対象ではありませんが微妙な方はご相談ください。

陰嚢水腫

陰嚢水腫も鼠径ヘルニア同様にお母さんのおなかの中で、精巣がお腹から睾丸の袋に下がってくるときにできる通路(腹膜鞘状突起)が完全にくっついていないときに起こります。鼠径ヘルニアほど通路は大きくないために、細い交通路を通って水腫が形成され、陰嚢の袋の部分の固まりは腸ではなく水腫となります。1才頃までには、自然によくなりますので、経過を見ます。もしそれ以上続く場合は、針を刺して液を抜くのではなく、手術が必要になります。

包茎

まず新生児や乳児はほとんどが包茎(真性:めくろうとしても、穴が開かない)ですが、何もしなくてよいです。ほとんどが自然に問題がなくなりますが、三歳頃になってめくろうとしても少しの穴も見えないような場合は、手術をした方がよいかもしれません。ちょうど3歳児検診で、包茎に関して最終チェックになりますので気になる方はご相談ください。ご家庭で強引にめくっているとかえって、傷を付けて裂けたところがくっついて伸びが悪くなることがあるので、おすすめできません。

亀頭包皮炎

ばい菌(細菌)によって包皮(おちんちんの先を包んでいる皮)と亀頭(その中に包まれたおしっこがでる丸く突き出した部分)に炎症がおこり、おちんちんの先の膨らんだ部分が赤く晴れて、痛がったり、膿が出てパンツが黄色くなったりします。抗生剤を飲んだり、塗り薬使ったりして治します。何度も繰り返す人は包茎が原因となっていることがあるので、包茎の手術が必要になることもあります。
*)女の子でも「外陰膣炎」といってばい菌(細菌)がおちんちんまわりについて同じように痛がったり、おりものが出る場合があります。治療は同様に抗生剤を飲んだり軟膏を塗ったりして治療します。

亀頭部恥垢(ちこう)

亀頭部のおちんちんを覆っている包皮の下に、チーズの固まりのようなものが見えることがあります。これは、ばい菌が入っているのではなく、恥垢という垢(あか)がたまっているだけです。無理に包皮をむいて垢(あか)を取り出す必要はありません。自然にとれますので、そのまま放置してかまいません。

肛門周囲膿瘍(乳児痔瘻)

ほとんどが男児にみられます。肛門の3時の方向におできができることで見つかります。乳児で便のゆるいお子さんによくみられます。皮膚からばい菌が入った訳ではなく、直腸にちかい腸の内側からトンネルができて皮膚が赤く盛り上がります。繰り返すことがありますが1歳までにはだいたい治っていきます。治療としては、たまった膿を出すことでそのうち繰り返さなくなります。抗生剤を使って治そうとしても治りが悪いので、積極的に切開して膿を出すことを心がけます。切開するか、自然に破けて膿がでれば、次からは自然と膿が出るようになり治りやすくなります。一度小児外科できちんと診てもらいましょう。

肛門のスキンタグ

ほとんどが女児にみられます。肛門の12時の方向にヒダが盛り上がったようにみえます。「イボ痔じゃないか?」と心配して来られるかたもおられますが、これは、痔ではなく、便秘で固いウンチが出た後に肛門が切れておこる現象です。ですから、治療は便秘の治療になります。便秘しなくなれば、肛門も切れずに次第に目立たなくなってゆきます。腫瘍ではないので手術する必要はありません。

以上、いくつかの日常によくみかける子どものおちんちんや肛門付近の病気を示しました。写真は別の項目「おちんちんや肛門の病気」のところでご覧ください。
今回示した病気に似たような症状を見かけられましたら、検診時や小児科医に相談していただければ幸いです。

平成20年6月12日 院長
院長コラム
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