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喘息予防の最前線

喘息の治療

生まれて初めて行った病院で、いきなり『喘息ですから、しばらく治療をしないといけませんよ』などと言われ、びっくりして当医院へ相談に来られる方があります。かかりつけでは、気管支が弱いとか気管支炎とか言われ、お薬を飲んでもなかなか良くならない事、良くなっても繰り返す事があるかもしれません。いきなり病院を変わらずに、もう一度かかりつけと話しをしてください。その場合はまず、蓄膿症や肺炎やRSウイルス感染症がないかを見きわめる必要があります。それらの病気が否定され、気管支炎や夜の咳が繰り返し起こり、月に1回は病院へかからなくてはならないような状況が3ヶ月ほど繰り返されれば、「喘息の予備軍」かもしれません。その場合は、しばらく、以下の治療をして様子を見ます。私の病院では、夜間の咳が続くとか薬を飲んでも治らないといった患者さんの場合には、前述した病気を考えます。否定されたら、まず、症状が治るまで一旦治療をします。治ったら一旦薬をやめてしばらく、繰り返すかどうかをみます。もし、前記したように、1ヶ月に1回を3ヶ月連続で繰り返したような場合には、お薬を続ける事をすすめるようにしています。医者の言いなりになっていてはいけません。また、疑問がある場合は必ず疑問をかかりつけ医にぶつける必要があります。お母様たちが、お薬を続ける事に納得されてから初めて長期治療(本当の意味での喘息の治療)は開始されるべきです。

喘息の最近の治療

喘息の治療がここ数年で大きく変わってきました。大きく変わった点は、1)携帯用吸入ステロイド(フルタイド)の使用が増え、2)テオドールの使用頻度が減ったこと、そして、3)動悸が少ない携帯用β刺激吸入薬(セレベント)の使用が増えた事などです。また、以前からあるベネトリン+インタール吸入療法は、ステロイド吸入療法やセレベント使用にとって変わってきています。これは、大人な年長児ではもちろん乳幼児まで同じ事がいえます。乳児は別として、大型吸入器が必要の無い時代に入ろうとしてます。
喘息とはいったいどこからが喘息でどこまでが気管支炎かという問題から入って行く必要があります。「気管支が弱い」「喘息性気管支炎」「繰り返す夜間の咳」などは、喘息の一部としてとらえても良いでしょう。それぞれで治療が異なることはありません。上記した症状は気管支内の粘膜が炎症を起こし気管支が細く痰が絡みやすくなっている状態ですので、すべてにおいて、気管支の炎症を抑えたり気管支を広げたりする治療が必要になり、喘息のときに使う薬が使われます。

1)喘息の治療とは何か
喘息の治療とは、繰り返さないように健康な気管支の状態を保つことが治療と言えます。もちろん、急性期の治療と予防する治療とでは少し薬の内容が違ってきます。

2)急性期の治療
「気管支が弱くなっている状態」「喘息性気管支炎」「繰り返す夜間の咳」などをまずおさえるために、βー刺激剤(ホクナリンテープ)、メプチンシロップ、ムコダインームコサール(痰きり)、抗ロイコトリエン拮抗剤(プランルカスト、オノン、キプレス)、携帯用ステロイド吸入薬(フルタイド)、ときにテオドールなどが主に使用されます。

3)症状が良くなってからの治療(3ヶ月連続で月に1度は気管支炎や夜間の咳で病院にかかる人はこの治療が必要です)
季節の変わり目や年に2-3回しか上記のような症状がおこらない人は、急性期だけの治療をして良くなればそれでおしまいになります。このような人は大きくなっても繰り返してこない場合が多いからです。しかし、いったん症状が良くなっても、薬が切れると同じような症状が1ヶ月に一回以上繰り返されるようになってきた場合は、「良くなってからの治療」を続ける必要があります。これが、喘息の治療と言われるものです。いかに繰り返さないかが目標になります。繰り返すたびに急性期だけの治療でおさえていても、繰り返す人の中から小学生や中学や大人になっても治らない人が出てくることがわかってきました。「大きくなっても引きずらないこと」が現在求められている治療です。
主に、携帯用ステロイド吸入(フルタイド)や抗ロイコトリエン拮抗薬(オノン、キプレス、プランルカスト)、またはβ刺激吸入薬(セレベントなど)の追加、さらにはテオドールの追加を急性期の治療に引き続き使ってゆく方法です。乳児では抗ロイコトリエン拮抗薬が中心で幼児や小学生になると携帯用吸入ステロイド(フルタイド)が中心になります。乳児でもコントロールがうまく行かない場合には携帯用吸入ステロイドを追加します。乳児では補助吸入器を使って携帯用吸入をしますが、うまく行かない場合は、吸入器を購入して頂き、ステロイドの吸入液(パルミコート)やベネトリン(β刺激薬)+インタール療法をする場合もあります。
前述しましたが、テオドールは今までのように、継続することはしない方針にあります。テオドールはケイレンを誘発させたりすることが示唆されているからです。特に乳児には使いません。テオドールは、1)発熱時、2)けいれんを起こしたことがある人、3)乳児への投与、などは慎重に使用するようになってきました。

4)いつまで続けるのか
これに関しては現在のところ決められたものはありませんが、およそ3ヶ月以上は症状がでないことを確認した上で薬の減量をしてゆくようにします。抗ロイコトリエン拮抗薬を残す場合や吸入ステロイドの量や回数を減らして残す場合などその人にあった方法で決められます。全体を通して約半年は続けた方が良いのではないかという意見があります。

5)注意点
これらの治療を続ける必要があるのかをまずしっかりと医師と話します。初めて診察した先生がこの治療をすぐに開始することは、あまり考えられません。初めての夜間の咳、初めてのぜいぜいがあっても、繰り返さない限りは上記の長期治療を導入してはいけません。当医院では、「繰り返し」が私自身で確認した場合にのみ、この治療をお勧めしています。携帯用ステロイド吸入の量が年齢や症状により異なりますが、乳幼児でフルタイド50を1日に1-2回、小学生で100を1-2回がめやすになります。1日に100を4回などというのは喘息では、大人の中等度の喘息に使用する量で、子どもでは最も重症な部類に入りますので、よほどの事ではこの量を使う事はありません。症状が落ち着けばもちろん減量が必要です。
また、副鼻腔炎(蓄膿症)がある場合には、いくらこの治療をしても治りませんので、「鼻づまり」や「鼻声」、「続く青ばな」がある場合にはまず、副鼻腔炎の治療(抗生剤や抗アレルギー剤の1-2週間の使用)を先に行って、鼻がよくなっても咳が続くようであれば、上記治療を開始します。
喘息に似た病気で「細気管支炎」というRSウイルスによっておこる気管支の病気があります。この病気は発熱がみられ乳幼児に多い病気ですので、風邪による喘息と間違えられやすいので、熱が出て初めてぜいぜいがでたお子さんでは、とくにこの病気かどうかを鼻水をとって調べる必要があります。この病気であれば、「喘息性気管支炎」「気管支が弱い」「夜間に咳き込む」などの喘息様症状の1回には入りません。

以上、「喘息の治療の最前線」ということでお話ししてきましたが、これは2006年の喘息治療ガイドラインに基づいた考えであり私の特別な治療方針ではありません。また、今や、喘息は悪いときだけ治療する時代ではなく、予防して、いかに日常生活を普通通りに制限なく快適に暮らせるかが目標になっています。分からないことがあれば、私におたずねください。現在、飲んでいる薬や吸入など適切な量、種類がいっているのかなども遠慮なくご相談ください。わざわざ、アレルギー科などといった看板がついた病院に行く必要はありません。ちゃんと勉強し、経験豊富な小児科医であれば上記に説明したことは常識的なことです。予防治療は抗アレルギー剤(オノン、キプレス、アイピーディー、プランルカストなど)、携帯用ステロイド吸入(フルタイドの50か100を1日1-2回)、メプチンキッドエアーやセレベント(β刺激剤)の吸入の追加かもしくは慎重にテオフィリン剤の追加(当医院ではあまり使用していません)によりほぼ、コントロール可能です。コントロールができれば、テオドールやβ刺激吸入を外し、抗アレルギー剤かフルタイドを減量しながらコントロールしてゆきます。使用する薬や使用する期間については人によってちがってきます。
喘息は長期の治療管理が必要です。親御さんのご理解、ご協力、本人の自覚がなければうまくいきません。お互い相談しながら、一緒にがんばりましょう。疑問があれば、何でも相談してください。

平成19年11月更新  きのした小児科 木下昇平
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